日本人の8割が経験する腰痛【種類別・原因と対策】

腰痛女性

日本人の8割が経験する腰痛

「腰痛は国民病」と言われるほど、多くの方が悩みを抱えている問題です。
実は腰痛にも様々な種類があり、痛みの場所や感じ方で原因や対処法が大きく変わってきます。

このページでは、日常で最もよく見られる「筋膜性腰痛」の詳しい原因と、その対策、
そして知っておきたいその他の腰痛の種類とその特徴を分かりやすく解説します。
あなたの腰痛がどのタイプに当てはまるのか、そしてどうすれば改善できるのか、一緒に見ていきましょう。

1.多くの人が経験する「筋膜性腰痛」とは?原因と自分でできる対処法

腰痛男性

腰痛と聞くと、ギックリ腰やヘルニアを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、実は日常で起こる慢性的な腰痛のほとんどは「筋膜性腰痛」と言われています。
これは、腰やお尻、股関節周辺の筋肉や筋膜が硬くなったり、弱くなったりすることで起こる腰痛です。

自分の腰痛が、身体を曲げる時に痛むのか(屈曲痛)、それとも反らす時に痛むのか(伸展痛)で、原因となる筋肉や対処法が異なります。

身体を曲げると痛い(屈曲痛)腰痛

こんな時に痛みが強くなる

  • 立ち姿勢から前かがみになる時
  • 靴下や靴を履こうとする時
  • 脚を伸ばして座る姿勢を長時間続けた後
  • 急にしゃがんだ時
  • 物を投げる際に背中を丸めた時

原因
日常生活で股関節をあまり動かさないでいると、股関節周辺の筋肉が徐々に弱くなり、柔軟性も失われていきます。
この筋肉が弱く硬くなると、身体を曲げる際に股関節が十分に曲がらず、骨盤がうまく前傾できなくなります。
その結果、腰や背中の筋肉が無理に引き伸ばされてしまい、痛みを引き起こしてしまいます。

対処法
股関節周辺の筋肉、特に太ももの裏側(ハムストリングス)やお尻の筋肉の柔軟性を高めるストレッチが効果的です。
また、座りっぱなしの時間を減らし、こまめに立ち上がって体を動かすことも大切です。

身体を反らすと痛い(伸展痛)腰痛

こんな時に腰が痛くなる

  • * 身体を後ろに反らす時
  • 椅子から立ち上がる瞬間
  • 高いところの物を取ろうと手を伸ばした時
  • 長時間座っていた後に立ち上がった時

原因
身体を反らす際に、股関節の伸展が制限され、それを補おうと腰椎(腰の骨)が過剰に反り過ぎてしまうために起こります。
これを防ぐには、骨盤がうまく後傾できることが重要で、その為には腹筋の力が不可欠です。
腹筋が弱かったり、うまく使えていなかったりすると、身体を反らした時に腰に負担がかかり、腰痛が起こりやすくなります。

対処法
腹筋を鍛えることで、腰椎の過剰な反りを防ぎ、腰を安定させることができます。
また、股関節の付け根(腸腰筋など)の柔軟性を高めるストレッチも有効です。

2.腰痛の根本改善には「筋肉」が最重要!マッサージだけではダメな理由

腰痛イメージ

「腰が痛いからマッサージに行こう」「整体で一時的に楽になるけど、またすぐ戻ってしまう…」そんな経験はありませんか?
マッサージや整体は、一時的に筋肉を緩めて痛みを和らげる「対処療法」としては非常に有効です。
しかし、それだけでは根本的な改善は難しい場合が多いのです。

腰痛の予防や改善には、特に腹筋や背筋、そして股関節周辺の筋肉を「正しく動かし、柔軟性を確保すること」と「筋力を高めること」が不可欠です。
硬くなっている筋肉は緩め、弱くなっている筋肉は鍛える、という両面からのアプローチが必要です。

特に、お腹の深部にある筋肉、いわゆる**「インナーマッスル」が非常に重要です。
この筋肉は、腹圧を高めて腰を安定させる、まさに「天然のコルセット」のような働きをしてくれます。
この腰を安定させる筋肉をうまく使えていないと、日常の動作で腰に余計な負担がかかり、腰痛が起こりやすくなります。

マッサージや整体では筋肉を緩めることはできても、鍛えることはできません。
一時的に楽になりたい場合は良いですが、根本的に腰痛を改善したいと考えるなら、是非運動も取り入れてみてください。
筋肉を正しく動かし、鍛えることで、筋肉の連動性を高め、上手に身体を使えるようになれば、腰痛の再発を防ぐことにも繋がります。

3.もしかしてそれ、他の病気?知っておきたい「腰痛の種類」と特徴

日常の腰痛の多くは筋膜性腰痛ですが、中には医療機関での診察が必要な、他の病気が原因で起こる腰痛もあります。
ここでは、代表的な腰痛の種類とその特徴をいくつかご紹介します。

急性腰痛:ぎっくり腰
医学的には「筋筋膜性腰痛症」とも呼ばれます。
急に立ち上がったり、重いものを持ち上げたりした時に、電気が走るような激しい痛みが特徴です。
長時間座っていたり、前かがみの姿勢が続いたりしても痛むことがあります。

原因
急な動作などで筋肉や関節に過度な負荷がかかり、筋疲労が起こることで発症すると言われています。
運動不足や疲労、肥満、血行不良なども原因となります。
女性の場合、月経時に骨盤が緩むことが腰痛の原因になることもあります。
神経症状を伴う腰痛
椎間板ヘルニア
腰だけでなく、足先のしびれや痛みが出ることがあります。
咳やくしゃみでも痛みが響き、悪化すると排尿困難になることも。
座れない、前かがみになれない、寝ているのが一番楽な姿勢という方もいます。

原因
背骨のクッションの役割をしている椎間板の中心部(髄核)が飛び出し、神経を刺激することで痛みやしびれが発生します。
椎間板や髄核は年齢とともに弾力性を失っていきます。
腰椎分離症
腰椎の後方にある椎弓が疲労骨折して脊柱が不安定になる病気です。
下肢(脚)に痛みやしびれを伴うことも。
立つ、歩く、背中を後ろに反らすなどの動きができない、または持続できないという症状が見られます。
運動中に突然腰が抜けるような症状が出たら疑われます。

原因
腰をひねったり、前屈・後屈したりするなど、腰椎に過度の負荷がかかる運動時に発症することが多いです。

腰椎すべり症
分離症よりも腰痛や下肢の痛みの頻度が高いと言われます。
椎骨が前方へ滑り出して発症します。

原因
主な原因は加齢ですが、若い頃に激しいスポーツを経験した方に多く見られます。

腰部脊柱管狭窄症
長時間に及ぶ歩行に伴い痛みが発生し、歩行困難になることもあります。
痛みは腰部から足の裏にかけて現れるのが特徴。立っている時、特に腰を伸ばすと痛みが強くなる傾向があります。

原因
背骨の中を通る神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経や血管を圧迫することで発生します。
先天性のものと、すべり症やヘルニアなどによって後天的に起こるものがあります。
中高年に多く見られます。

坐骨神経痛
痛みは腰部だけでなく、お尻、太ももの裏側、ふくらはぎの裏側、足の甲まで広がり、痛みよりもしびれが強く現れることが多いです。

原因
ヘルニアなどによって坐骨神経が刺激されることで発症します。
関節が原因の腰痛
椎間関節性腰痛症
朝起きると腰に痛みがあり、起き上がれないといった症状が出ることがあります。
しかし、時間が経つにつれて症状が改善され、午後には体を動かしても痛みが気にならなくなることが多いのが特徴です。
ぎっくり腰やヘルニアと間違われやすいですが、この時間による症状の変化がポイントです。

原因
腰椎の関節に炎症が起こることで発症します。
捻挫などの外傷、細菌感染、薬や注射の副作用、加齢や肥満による骨や軟骨の変質など、様々な要因が考えられます。
骨が原因の腰痛
骨粗鬆症
骨からカルシウムが溶け出して骨量が減少し、骨がスカスカになって脆く折れやすくなる病気です。
腰や背中に痛みが現れますが、痛みがなかなか引かないのが特徴です。
脊柱が圧迫骨折することもあり、猫背になったり身長が低くなったりすることもあります。

原因
主な原因は加齢ですが、更年期障害により女性ホルモンのバランスを崩すと発症しやすく、中高年の女性に多く見られます。
寝たきりになる原因の上位に挙げられており、中高年は特に注意が必要です。

4.見逃さないで!実は危険な「内臓疾患による腰痛」

腰が痛いイメージ

腰痛の中には、内臓の病気が原因で起こるものもあります。
腰に痛みを感じたら、単なる筋肉痛だと思わずに、他の症状がないか注意深く観察することが大切です。

尿路結石
腎臓や尿管などの尿路に結石ができる病気です。
腰部に痛みが現れるのは、結石が移動して腎臓の中の圧力が高まる為です。
激しい痛みを伴うことが多いです。

原因
尿に溶け込んでいるシュウ酸カルシウムなどが結晶化することで発症します。
月経困難症
月経時に腰痛や下腹部痛が発症します。
子宮筋腫や子宮内膜症などが原因となる「続発性」と、それ以外の「原発性」があります。
腰痛に加えて吐き気、嘔吐、頭痛、めまいなどが現れることもあります。

原因
ストレスによって症状が増幅されることもあります。
膀胱炎
腰痛も起こりますが、急性期は排尿時の痛みや血尿、尿の混濁が見られます。

原因
細菌感染(特に大腸菌が多い)、薬物、放射線などによって膀胱内に炎症が起きます。
月経、過労、性交、排尿を我慢することなども感染のリスクを高めます。

まとめ

腰痛は本当に辛いものです。
国民病と言われるほど多くの方が経験する腰痛ですが、その原因は様々です。

まずはご自身の腰痛が「筋膜性腰痛」のタイプなのか、それとも「他の病気が隠れている可能性」があるのか、この記事を参考に少しでもヒントを得て幸いです。
特に、足のしびれや排尿困難、安静にしていても痛みが続く、時間経過で症状が改善しないなどの場合は、早めに医療機関を受診してください。

そして、日常的な腰痛の多くは、適切な運動と生活習慣の見直しで大きく改善できます。
マッサージや整体も一時的な対処法として有効ですが、根本的な改善を目指すなら、「弱っている筋肉を鍛える」ことにも取り組んでみましょう。